燃え尽き症候群(バーンアウト)は、必ずしも劇的に現れるわけではありません。静かな会議、守られない締切、そして「この仕事に意味はあるのか」という感情の積み重ねによって、じわじわと進行していきます。目に見える頃には、すでに手遅れになっていることも少なくありません。
多くの職場で、従業員の「静かなサイン」が見過ごされ、結果として退職や生産性の低下につながるケースが増えています。今回、約1,000人を対象に実施した調査からは、従業員の声と、企業が見落としがちな支援のギャップが明らかになりました。
責任は誰にあるのか -「共有責任」の落とし穴
「燃え尽きを防ぐ責任は誰にあるか」という問いに対し、
と回答しました。 「共有責任」という考え方は理想的に聞こえますが、実際には責任の所在が曖昧になり、誰も具体的な行動を取らないという事態を招きがちです。 見落とされがちな点:
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企業ができること:
制度の「見える化」と個別周知
管理職に早期サインを見抜く力と対応力を持たせる
「共有責任」の具体像を明確にする
なぜ人は仕事に無関心になるのか -「意味」の欠如
「仕事に対して精神的に離れ始めるのはどんな時か」という問いに対し、
と回答しました。パフォーマンスの低下よりも先に、感情的な距離が生まれているのです。 見落とされがちな点:
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企業ができること:
入社時や評価面談で、役割と成果のつながりを明確にする
裏方業務や横断的な協力も評価対象に含める
フィードバックを「行動につながるサイクル」に変える
回復の手段は?──多くは「離脱」
「燃え尽きや退屈からどう回復したか」という問いに対し、
という結果に。多くの人が、組織内での対話よりも「離れる」ことを選んでいます。 見落とされがちな点:制度の不足ではなく、「信頼」の不足が原因であることが多いのです。 |
企業ができること:
問題が表面化する前に「リセットの対話」を日常化する
支援を「人間的で身近なもの」にし、非公式な相談ルートも整える
管理職が「目標」だけでなく「エネルギー」や「感情」にも目を向ける
調査結果が示す本質──「つながり」の欠如
今回の調査では、燃え尽き・無関心・回復という異なるテーマを扱いましたが、共通して浮かび上がったのは「つながりの喪失」です。
やる気がないのではなく、「意味が見えない」「声が届かない」「支援が感じられない」ことで、人は静かに離れていきます。
企業が今すぐ始められること
文化を一夜で変える必要はありません。小さな意図的な変化から始めることが大切です。
責任の明確化:共有責任の具体像を示し、支援体制を整える
目的のローカライズ:個々の仕事がどう社会に貢献しているかを伝える
フィードバックの可視化:声を聞くだけでなく、行動で応える
管理職の支援:会議の数ではなく、問いの質を高める
回復の再定義:休むことが「辞めること」にならないようにする
「聞くこと」は戦略である
無関心は、叫びではなく「ささやき」として始まります。その小さなサインに、私たちは耳を傾ける準備ができているでしょうか。そして、気づいたときにすぐ応えられる仕組みを、私たちは持っているでしょうか。
人材の流出を防ぐためには、問題が起きてからではなく、起きる前に備えることが何よりも重要です。「聞くこと」は、単なる姿勢ではなく、組織を守るための戦略なのです。
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